MIKKE RESEARCH — 制度詳解 2/2

制度詳解02|返金(リファンド)は誰が・どこで・どう行うか

v1|2026年8月3日|国税庁「Q&A(詳細編)」全109頁・全国免税店協会一覧・各事業者公式サイトに基づく。引用は原文ママ(太字は当方)

お金は一切国を通らない。返金は「店(と委託先)の仕事」で、法令はやり方を何も定めていない。
税関OKの合図はプッシュ通知ではなく、店側が国税庁APIへ取りに行く(Pull型)。 結果、旅行者の返金体験は「どの店で買ったか→その店がどの事業者に委託しているか」で系統ごとに分かれる。

1. 返金の法的位置づけ — 義務者は店、方法は自由、怠っても税務ペナルティなし

論点結論
返金の義務者免税店(自ら行うか、委託)。国は確認だけでお金に触れない
返金方法法令ノールール。銀行振込/クレカ送金/アプリ送金/出国港内の現金 が例示
返金しなかったら税関確認情報を保存していれば免税適用は受けられる(=税務上のペナルティなし)。返金不能分は雑益処理可
委託先の資格不要(承認事業者である必要なし)。ただし資金決済法・犯収法・外為法など金融規制はかかり得る
出典: 国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(詳細編)」(PDF) 55頁・問57
「免税購入対象者への返金手続については、輸出物品販売場を経営する事業者自らが行うほか、承認送受信事業者等にその返金手続を委託するといった方法が考えられます。」「返金手続をどのように実施するかは消費税法令において何らルールを定めているものではありません。具体的な返金方法については、例えば、銀行振込や、クレジットカード送金、アプリ送金、また税関の確認を受けた出国港内での現金による返金といった方法が考えられます。」
出典: 同Q&A(詳細編) 57頁・問59「税関の確認後に返金が行えなかった場合の処理」
免税購入対象者に返金できなかった場合であっても、税関確認情報を保存していれば、免税の適用を受けることができます。 …免税購入対象者側の都合(例えば、返金先口座番号の記載誤りや返金方法の登録誤り等)でやむを得ず返金できないときに、当事者間の契約により返金不要となった消費税相当額については、雑益(不課税)で処理することになります。」
出典: 同Q&A(詳細編) 55-56頁・問58「返金手続に当たり必要な資格等」
「その返金手続の委託を受ける者は必ずしも消費税法令上の承認免税手続事業者や承認送受信事業者である必要もありません。一方で…消費税法以外の法令に関して、例えば次のような対応が必要となります。」(資金決済法に基づく資金移動業の登録/犯罪収益移転防止法に基づく本人確認/外為法に基づく制裁対象の事前確認 — 表として例示)

なお免税店の許可要件(同Q&A 14頁・問14)は「①滞納なし等の事業者であること ②免税販売手続の体制 ③購入記録情報の提供等の体制」の3つで、返金体制は含まれていません。許可取消事由も「購入記録情報に不備又は不実の記録があること等」で記録側の話。返金の懈怠は税務ルートでは処罰されず、規律は民事(旅行者との契約)と金融規制の世界に置かれています。

2. 誰が返金を担うのか — 「8社」の正体と対応A/B/C

全国免税店協会が公表する「返金に対応予定の承認送信事業者一覧」(2025年10月現在)には8社が掲載されています(申告順): J&J Tax Free / Pie Systems Japan / スマートテクノロジーズ&リソーシーズ(Smart Detax) / ツアレゴジャパン / グローバルブルー ティエフエス ジャパン / 日本免税 / WAmazing / グローバルタックスフリー。ただしこれは固定の公認枠ではありません。

出典: 全国免税店協会「返金に対応予定の承認送信事業者(免税システム事業者)一覧」2025年10月現在(PDF) 注記
「※2 事業者の申告に基づき、免税店様・承認送受信事業者様向けのご参考用に掲載するもので、全国免税店協会としての認可や保証等をあらわすものではございません。」
出典: 同Q&A(詳細編) 55頁・問57(参考)1 — 国の側からも同じ注意書き
「この一覧は、全国免税店協会が各事業者からの申告に基づき取りまとめたものですので、国としてこの一覧に掲載されている承認送受信事業者について、返金に関する各種認可や保証等を表すものではありません。」

母集団はもっと広く、観光庁「電子化に対応した免税システム事業者情報」(2026/1/13現在・PDF)には22社が掲載され、「※リファンド方式に対応しているかどうかは各事業者へお問い合わせください」と注記されています。22社のうち返金対応を表明したのが現時点で8社、という関係です。

店から見た委託パターン(協会PDFの原文表)

種類購入記録情報の送信消費税相当額の返金
対応A免税店のシステムから送信返金業務を他社に委託
対応B承認送信事業者のシステムを利用利用している承認送信事業者に返金業務も併せて委託
対応C承認送信事業者とは別の事業者に返金業務を委託

対応A・Cの存在は「送信」と「返金」が分離可能なことを示す。返金だけを担う事業者の参入は制度上想定されており、しかも§1のとおり消費税法上の許可は不要(金融規制のみ)。

3. 旅行者から見た返金フロー — 店の委託先ごとに系統が分かれる

実際の各社フロー(公式サイト確認・2026年8月時点):

事業者返金先の登録方法アプリ要否返金手段
J&J Tax Free
(J-TaxRefund)
店頭POP・レシート印字のQRコードからWebで旅券・返金先を登録。「登録は初回のみ、お買物の都度の手続きは不要」不要
(Web完結)
クレカ/銀行振込/QRコード決済アプリ/現金等
PIE VAT「お客さん自身がモバイルフォンを使用し免税申請、受け取り口座の指定までする」。店舗無料・旅行者から手数料を取るモデルを明言アプリ前提
とみられる
「135通貨・豊富な返金手段」(個別明示なし)
Global Blue「Global Blue Shop Tax Free App」またはWebの「My Purchases」で受取方法を登録アプリ/Web
両対応
公式資料に個別列挙なし
Smart Detax「指定のWEBサイトやアプリで、パスポート情報・購入情報・返金先口座等を登録」。送金手数料の目安0.1〜0.5%(金融機関側)を明記Web/アプリクレカ/ペイ系/銀行送金/空港現金
WAmazingリファンド方式の旅行者向けフローは公式サイトに記載なし(協会一覧では「対応B」のみ)不明不明

店には法定の説明義務がありますが(同Q&A 問17・18: 「90日以内の出国時に税関確認を受けること」「確認を受けないと返金されないこと」等を外国語書面・掲示等で説明)、返金先の登録方法の案内は法定外で各社の設計次第。結果として旅行者の体験は「回った店の委託先の数だけ登録手続きが並走する」形になります(同一事業者の加盟店同士なら共通化: J&Jは初回登録のみと明言)。

4. 税関OKはどうやって店に伝わるのか — Pull型API連携

  1. 税関→国税庁: 税関長は持ち出しを確認したら「購入記録情報ごとに、遅滞なく」税関確認情報を免税販売管理システムに登録(問24、消法8③・消令18⑨)
  2. 店側→国税庁: 店(自社送信)または承認送受信事業者(委託)が、電子証明書(クライアント証明書)を入れたシステムから照会リクエストを送る — プッシュ通知は来ない
  3. 国税庁→店側: リクエストへの応答として税関確認結果を返却。「日時指定」(最大31日範囲・1回1,000件)と「取引指定」(1件)の2方式(問105)
  4. 突合→返金判断: 返却データ(送信者識別符号・販売場識別符号・送信番号・登録日時・確認情報区分)を手元の購入記録情報と照合(問108)
出典: 同Q&A(詳細編) 88頁・問105「税関確認結果の取得方法」
「税関確認結果(税関確認情報である「税関確認済」又は税関確認情報が提供されないことが確定した情報である「免税不可」)を取得する仕組みは、事業者側からのリクエストに基づきデータ提供する方式(Pull型API連携)となります。」

返金OK/NGの判断は3値

照会結果意味店のアクション
税関確認済90日以内に税関の持ち出し確認を受けられた返金OK・免税成立
免税不可持ち出さないことが確認された/90日以内に確認を受けられなかった(確定)返金なし・課税のまま
0件まだ税関の確認を受けていない(または旅券番号誤り等)保留・再照会
出典: 同Q&A(詳細編) 91頁・問110「税関確認結果の見方」/ 90-91頁・問109(0件のケース)
「税関確認情報である「税関確認済」: 免税対象物品を持ち出す(輸出する)ことについて、購入日から90日以内に税関の確認を受けることができたもの」「税関確認情報が提供されないことが確定した情報である「免税不可」…」「「税関確認情報件数」が0件である場合、そのリクエスト時点において…税関の確認をまだ受けていないことなどが考えられます。」

重要な制約 — 照会できるのは「送信した者」だけ

出典: 同Q&A(詳細編) 89-90頁・問107「税関確認結果の照会時の制限」
「リクエスト条件が権限の範囲内であるか否かのチェックについては、電子証明書(クライアント証明書)の資格情報の識別符号も使用しています。…一の輸出物品販売場に係る税関確認情報の取得に係る事務を複数の承認送受信事業者が受託している場合…他の承認送受信事業者が送信を行った(自身が送信を行っていない)購入記録情報に係る税関確認結果を取得することはできません。」

つまり国税庁APIの税関確認結果は購入記録情報を送信した当事者しか取得できません。送信に関与しない第三者が旅行者の還付ステータスを横断的に取得するルートは、現行仕様には存在しない。旅行者本人はVisit Japan Webで「税関確認により返金手続の対象となる購入記録情報の明細」を確認できます(問21周辺)。

5. 事前返金 — 「その場で返す」は許されるがリスクは店持ち

出典: 同Q&A(詳細編) 55頁・問57(参考)3
「返金手続は、基本的に、税関確認情報を取得した後に行うこととなりますが、税関確認情報を取得する前に行うことも妨げられません。ただし、この事前返金を行ったものの、免税購入対象者が出国時に税関での確認を受けなかったときは、輸出物品販売場を経営する事業者は免税の適用を受けることはできません。…事前返金を行う場合には、このようなリスクがあることも踏まえ、事業者の責任において行う必要があります。」
通常の後払い返金事前返金で客が税関確認を受けなかった場合
店が受け取る額(税込11,000円の例)11,000円10,000円(1,000円をその場で返却)
税関確認あり → 免税成立なし → 免税不成立(課税のまま)
店が国に納める消費税0円約1,000円
店の手残り10,000円約9,000円(消費税分を二重に吐き出し)

旧制度の「その場で税抜き」体験を再現したい店・事業者は事前返金に踏み込めるが、「客がキオスク端末を通らずに帰国するリスク」の与信を丸ごと負う。国は補填しない。

6. 未決の論点(公式情報が無い部分)

① 返金の標準リードタイム — 各社とも「税関確認後」としか記載なし。具体日数は8社中どこも未公表(2026年8月時点)
② 旅行者向け手数料の相場 — PIE VATは旅行者課金を明言するが料率非公開。Smart Detaxの0.1〜0.5%は金融機関側送金手数料の目安であり事業者マージンとは別
③ 「複数店舗=複数系統」問題 — 構造的に必然だが、これを主題に論じた公式資料・報道は今回の調査では未発見。導入後の旅行者の声が最初の実データになる見込み
④ 照会の運用頻度 — Pull型APIをどの間隔で回すかは各事業者の設計次第。「税関確認→着金」の体感速度はここで決まる